実習生の皆様へ

実習生の皆様へ 〜実習前に知っておいて欲しいこと〜

実習が始まる前は、期待と不安が入り交じった状態だと思います。実際の臨床現場を体験するという期待と同時に様々な不安があるでしょう。実習について行けるかな、朝遅刻せずに毎日通えるかな、薬剤師の先生方は怖くないかな、研究室の課題はこなせるかな・・・などなど、人それぞれ考えるところはあると思います。もちろん、実習は臨床現場で行われるものですので、甘くはありません。実際の患者さんに投薬される薬剤に触れたり、直接、患者さんと面談する機会もあります。学生であっても白衣を着ていれば、他の医療スタッフと同様の高いプロ意識が求められます。また、忙しい業務の中で薬剤師は実習指導を行います。当然、社会人としてのマナーや態度も求められます。

岡山大学病院薬剤部での実務実習は、学生の皆さんの自主性を重んじています。自分自身が勉強したいと思えば、11週間の間にたくさんのことを得ることができる実習内容と環境を整えています。日々のポートフォリオ記入、発表課題、各部署での課題など、多くのことをこなす必要があります。実務実習は、大変なことではありますが、どんな進路を希望していても、学生のみなさんそれぞれに得るものが必ずあります。

進路希望別に、病院実習における心構えやポイントを用意しました。こころの片隅に留めておいてください。

A 将来は病院薬剤師になりたいという方

病院薬剤師になりたいという方は、もちろん実習内容は将来の仕事に直結します。実習中に大切なのは、何かを教えてもらって覚えて満足しないことです。現時点で臨床現場で行われていることは、就職する頃には古くなっているかもしれません。また、当院だけの業務上のルールを覚えても、薬剤師としての仕事を覚えたことにはなりません。病院薬剤師として何をどう考えて仕事をしているのかについて注目しましょう。

一口に、病院薬剤師といっても病院の機能により、薬剤師に求められる役割、業務内容、勤務形態は、それぞれの病院によって異なります。当院は、総合病院であり、がん拠点病院であるという特徴があります。さらに、大学の附属病院ですので、教育や研究という側面が、薬剤師に求められます。そういった特徴を踏まえた上で実習に臨みましょう。

B 将来は薬局薬剤師になりたいという方

局薬剤師になりたいと思っている場合、調剤や患者面談など、薬局薬剤師と病院薬剤師に共通して求められるスキルはもちろん学習することができます。また、病院の特徴として注射薬を取り扱うこと、入院しないとできない治療や検査(手術、ある種の薬物療法など)を見ることができます。病院ではカルテを見ることができることも特徴だと思いますが、今度は、電子カルテが地域に開示される方向性がありますので、薬局でもカルテで検査データを確認するということもありうるかもしれません。

病院の仕組みを知っておくことは、将来、薬薬連携をしていく上でとても重要な経験になります。薬薬連携は、まず、病院薬剤師と薬局薬剤師がお互いを知る必要がありますが、現状ではほとんどの薬剤師が病院もしくは薬局のどちらかしか知らないという状況です。ですから、今のところ、薬薬連携は、思うように進んでいないというのが現実です。今後、6年制を卒業した薬剤師、すなわち、薬局と病院の両方で実習した薬剤師が、新たな薬薬連携の突破口となることを期待しています。そのためにも、病院の中で行われていることを体験するというのはとても重要なことです。

C 薬剤師にはなりたいがどういった施設で働くかは決めていない

薬局薬剤師と病院薬剤師では、患者さんとの関わる段階が異なります。つまり、薬局では、健康な状態から何らかの病気になったが外来通院できる状況の患者さんに関わります。より地域と密着していて生活の場に近いところでの関わりになります。病院では、健康な状態から病気になって、入院が必要になった状況で関わります。大雑把にいえば、薬局では慢性期、病院では急性期の患者が対象となります。

将来の就職先を決める上で、病院と薬局を比較してみることで、将来の進路がみえてくるかもしれません。勤務の仕方やお給料も大切な要素だとは思いますが、薬局薬剤師、病院薬剤師ともに、異なる役割を持って医療に関わっています。患者さんに生活の場で長く関わる仕事をしたいか、入院して治療をする場面で、より安全で最適な治療を提供する仕事をしたいのか、そういった側面も考えるとよいと思います。そういった視点から、実務実習に取り組んでほしいと思います。

D 研究職や開発職を希望している

企業や大学での研究職、企業での開発職を目指しているという方にこそ、実務実習を日々丁寧に過ごしてほしいと思います。もし、薬剤師にならないというのであれば、臨床現場を知る最後のチャンスです。まだまだ、病気で苦しんでいる患者さんは多くいます。だからこそ、臨床現場での問題点、求められていること、患者さんの思い、薬剤師の仕事など、知っておけば研究や開発職で活かすことができることは多いと思います。これこそが、薬学部を卒業した研究者、開発者の強みです。

実習では、薬剤師としての業務を教えてもらうことになると思います。ときには、薬剤師にならないのだから、スキルを身につけてもなあと思うこともあるかもしれません。研究職を希望していた、とある実習生に教えてもらったことがあります。“実習は単に業務内容を学ぶだけではない、むしろそういうことは些末なこと、与えられた立場で何をいかに学んでいくか、学んだことをどうやって活かしていくか”が、大切だと実習を通じて気づいたそうです。

E 行政関係を希望している

就職先として、行政関係(保健所、PMDAなど)を希望される場合もあると思います。医療は様々な法律や制度により動いています。行政の立場から、法律や制度に関わって行く上で、現場のことを知っていることは強みであると思います。今後、医療保険制度の変革もきっとあるでしょう。実務実習で経験した現場の感覚が、フィードバックされることを願っています。

F まったく進路を決めていない

進路を決めかねている場合には、実習を通じて、まず、どんな場で薬剤師が活躍しているのかを知ることができます。病院薬剤師の仕事はもちろんですが、薬学出身者がどういった職業で働いているのかがわかります。当院の場合、治験推進室では、臨床試験コーディネーターとして薬剤師が働いていますし、CROやSMOの方と接する機会があるかもしれません。他にも薬剤師とMR、MSといった職種の方との関わりも知ることができると思います。

実習中にポートフォリオを継続して作成することで、自分自身を客観的にみることができます。自分の興味関心はなにか、譲れないことは何かなど、自分のことがよくわかるようになります。将来どうなりたいのか、実習を通じてわかってくるのではないでしょうか。