スウェーデン/ウプサラ大学病院・デンマーク/コペンハーゲン大学薬学部(錦織淳美 薬剤師)

  • 視察国①:スウェーデン
    Dr. Ulrika Gillespie(薬剤師)・Dr. Henrik Cam(薬剤師):Uppsala University Hospital, Department of Pharmacy
  • 視察国②:デンマーク
    Dr. Anna Birna Almarsdrttir(教授)・Laura Victoria Jedig Lech(大学院生): Social and clinical pharmacy, University of Copenhagen
  • 渡航期間:2019年1月14日~18日

平成30年度 科学研究費補助金研究助成により、ウプサラ大学病院の病院薬剤師業務および医療情報ネットワークシステムについて学ぶ機会を得た。またコペンハーゲン大学薬学部 社会医療薬学教室を訪問し、デンマークの病院薬剤師業務および薬局薬剤師との連携について協議を行った。

ウプサラ大学薬学部はスウェーデン国内でもいち早く医療薬学教育を開始した背景もあり、同大学病院薬剤部でも2002年ころより病棟への薬剤師配置を開始、2004より常駐、2017年には20名の薬剤師を病棟配置させ、活発な病棟業務を展開している。薬歴や既往歴を含む患者医療情報はスウェーデンのeHealth システムにより整備されており、病院薬剤師はその基本情報から病院の電子カルテへ必要な情報を転記・薬歴確認をし、更に退院時処方についても再転記を行っている。地域薬局でもその内容を確認しながらの調剤が可能となっている。また、日本の平均入院期間が18日間であるのに対して、スウェーデンでの平均入院期間は4-5日間との統計があるが、実際伺ってみると、手術日当日入院は勿論のこと、救急医療でもトリアージを行いながら医学的に本当の意味での救急患者を優先する徹底した医療体制であり、軽症患者の待ち時間は十数時間に及ぶこともあると知った。一方、薬局では薬剤師が年に4回までリフィル調剤が行えること、一包化は専門薬局が一元管理を行い郵送にて患者宅に届けられること、また後発品優先の調剤が行われ、患者が先発品を希望した場合の差額は患者負担となるなど医療費削減に対する効率よい医療体制が整備されていると感じた研修であった。

デンマークのコペンハーゲン大学薬学部社会医療薬学教室の教授および病院薬剤師の社会人大学院生とデンマークの病院・薬局薬剤師の連携および医療情報ネットワークシステムについて情報交換を行った。デンマークには薬学部が2校あり、コペンハーゲン大学薬学部の卒業生の7割が製薬企業へ就職し、薬局へは10~15%、そして病院への5%程度が入職するとのことであった。そんな中、病院薬剤師業務は医薬品管理・供給・製剤が中心であり、臨床業務では救急患者への初回面談を行う程度に限局されている状況がうかがえた。医療情報に関しては、薬剤情報共有システム:SMR(Shared Medication Records: デンマーク語ではFMK)が2015年1月から稼働しており、最大2年間の処方歴や処方医療機関・適応症などが検索可能である。しかしながら、病院薬剤師による病棟業務は医療現場の要請もそれほど高くないため、薬剤師がSMRを活用して薬局薬剤師と連携していく状況には至っていないことがわかった。

2国の訪問を経て、日本が今後確立していく医療情報システムが医療施設で確実に定着している様子が伺え、今後の日本における医療情報・薬薬連携について考える良い機会となった。

ウプサラ大学病院前にて

ウプサラ市内の薬局カウンターの様子

コペンハーゲン大学薬学部にてDr. Anna Birna Almarsdrttir(教授)・Laura Victoria Jedig Lech(大学院生)とともに

米国サンフォード大学における薬学教育研修(河崎陽一 薬剤主任)

  • 研修・視察目的国:アメリカ
    Dr. Charlie Sands: Samford University McWhorter School of Pharmacy
  • 渡航期間:2016年10月3日~28日

平成28年度 公益財団法人永井記念薬学国際交流財団 創立30周年記念薬剤師エシックスフェローによりアメリカの薬学教育の現状ならびに薬剤師業務について研修を受ける機会を得ました。研修期間中には、Pharm.D.教育の現場ならびに病院・保険薬局の薬剤師に同行し、その業務内容について見学しました。Pharm.D.教育の現場では、座学形式の講義中でも教員が学生に質問を投げかけ、それに学生が答えるといった学生の能動的な姿勢で講義が進められ、活気のある環境で教育がされていることに感銘を受けました。日本の薬学教育の多くは、まだ受動的な形式の講義が多く、教育者の教育力(技術)の向上が必要であることを痛感しました。また、臨床系教員の多くが、病院あるいは保険薬局で日常診療に携わりながら、学部での講義ならびに現場での臨床実習教育を行っていました。ここに日本の薬学教育者の教育力向上のヒントがあるように感じました。アメリカの薬剤師の業務内容は、日本の薬剤師が行っている内容を大きな違いを感じることはなかったのですが、薬剤師による助言の効力の強さを感じました。研修期間中、薬剤師が行った助言通りにならなかった事例はありませんでした。この点からもアメリカの医薬分業が明確であることを確信しました。日本の薬剤師が今以上に医薬品に関する事項に介入していくためには、日本の環境に則した薬学教育内容の向上が求められると実感しました。アメリカの薬学教育をそのまま日本に移行することはできないにしても、アメリカで活躍する薬剤師と対等な社会的地位ならびに役割を果たせる薬剤師の育成のために着実に薬学教育改革ならびに薬剤師教育改革を実現していく必要があり、そのためにも他国の薬学教育の現状を学んだ同士をより多く排出する必要性を実感しました。

受け入れ先のDr. Sands教授

講義風景

臨床実習風景

ニュージーランド・ファンガレイ病院・薬局研修 (錦織淳美 薬剤師)

  • 視察目的国:ニュージーランド
    Dr. Harriet Sands: Whangarei Hospital, Department of Pharmacy
  • 渡航期間:2016年8月9日~13日

平成28年度 科学研究費補助金研究助成によりニュージーランド・ファンガレイ病院の退院時指導プログラムおよび薬局薬剤師業務について研修する機会を得た。ファンガレイ病院の薬剤師は昨年度、入院時の持参薬データー管理から入院中の経過・薬物療法モニタリングを行い、退院時の処方もれなどを防止することを目的に退院時指導プログラムを独自に立ち上げ、実施を行っていた。診療報酬算定は行われておらず、引き続き薬物療法管理を担う地域薬局からの支援を得て実施されていた。退院時に日本のお薬手帳にあたるYellow Sheetを交付し、退院時の薬剤情報が患者にわかりやすく提示されている様子がうかがえた。一方、薬局において薬剤師の業務は年々、拡大している状況を説明して頂いた。現在、調剤業務・服薬指導以外に薬剤師に委託されている業務として、

  • インフルエンザワクチン・水疱瘡・百日咳・髄膜炎予防ワクチン接種
  • ワーファリン INR値 測定と用量設定(かかりつけ医と協働)
などが行われていた。また、地域医療情報ネットワークとして、TONIQが整備されており、患者ID入力により患者の病歴・処方歴・アレルギー歴やかかりつけ医療機関などがすべて管理・閲覧可能となっている。それらの情報は薬局における指導・処方疑義に対しても有用に活用されている現状がわかった。ただ、地域医療情報ネットワークはニュージーランド全土を23区間に分けて管理されており、区域外の医療機関の情報が得られないなどの課題もあるとのことであった。現在、日本が目指す地域医療情報ネットワークが機能している現状がみられ、薬剤師が情報収集に難渋している様子はなかった。

全土に薬学部が2校しか設置されていないが、医療現場における薬剤師の需要と供給のバランスは保たれているとのことであった。

薬局窓口にて

日本の一包化にあたる Blister Package

NR値測定のため採血する薬局薬剤師

米国アリゾナ州ツーソンの退院後フォローアッププログラム研修(錦織淳美 薬剤師)

  • 研修・視察目的国:アメリカ
    Dr. Sandra Leal: SinfoniaRx & University of Arizona, Medication Management Center)
  • 渡航期間:2016年1月25日~27日

平成27年度 科学研究費補助金研究助成により米国薬剤師の薬物療法フォローアッププログラムについて研修する機会を得た。米国アリゾナ州のツーソン市にある医療コンサルタント会社(SinfoniaRx)薬剤師:Dr. Sandra Lealらが2015年8月より開始した新しいプログラム ~ Discharge Companion Program ~ 退院患者への薬剤師による電話コンサルト業務について見学した。ツーソンメディカルセンターを退院したハイリスク患者(肺炎・喘息・COPD・心筋梗塞・CABG術後・心不全・腎不全・DM・大腿/膝関節置換術後)を対象として、退院後1週間および3週間後の直接電話連絡によりフォローアップを行っている。薬物療法の継続やステロイド/抗菌薬療法などのテーパリング/中止について患者本人もしくは家族と相談・確認を行ったり、転院した場合は転院先の医療スタッフへ薬物療法に関するアドバイスなどを行ったりしている。実際の業務はアリゾナ大学薬学部が管轄するMedication Management Centerに勤務する薬剤師・レジデント薬剤師・Pharm.D. Program の学生により行われている。電話コンサルタント介入により、退院後の処方内容の見直しや追加処方の提案、また継続的な患者服薬指導がなされ、病態悪化・再発による再入院を未然に回避できた例がいくつも報告されている。現在、症例研究が行われている段階で、患者500名のコンサルト終了とともに統計分析・論文投稿が行われる予定とのことであった。

日本の薬剤師業務における、医療施設退院にむけての薬物療法アセスメントや退院・転院の薬剤情報提供書作成、更には2016年度診療報酬改定にて新設される“かかりつけ薬剤師管理料”の業務内容構築に非常に参考となる研修内容であった。

SinfoniaRx Office

Medication Management Center

アリゾナ大学内のサボテン

街角のサボテン

ハワイ大学シミュレーション研修(田坂 健薬剤師)

  • 研修目的国:アメリカ(ハワイ大学医学部John A.Burns School of Medicine, SimTiki Simulation Center(12月2日~3日)、Translational Health Science Simulation Center(12月4日))
  • 渡航期間:2013年12月2日~4日

1日目

まずは一人ずつ英語での自己紹介を行いました。まさか自己紹介をする機会があるとは思っていなかったので、名前と参加者の中で唯一の薬剤師であることとNice to meet you!!しか言えませんでした。ここはアメリカ、これから3日間の研修に対してやるぞ、という思いに加え若干の不安を抱えての研修スタートとなりました。

実際に講義が始まるとBerg先生はじめスタッフの先生方が非常にゆっくりとした英語でジェスチャーを交えながら話してくださるので思ったよりも難しいとは感じませんでした。講義ではシミュレーショントレーニングで「何を教えるのか?」「目的は何か?」「評価はどうするのか?」ということを中心にシミュレーターの選び方、オリエンテーションの重要性などを学びました。午後からは4人ずつのグループに分かれてシナリオデザインに取りかかりました。αテスト、βテストを繰り返して「何を教えるのか?」「目的は何か?」頭を使いながらシナリオを何度も練り直しました。

講義

研修

シナリオデザイン

2日目

2日目はデブリーフィングの講義と実際にシナリオを行ってデブリーフィングのトレーニングを行いました。デブリーファーは学習者から答えを「引き出す」ように、また「気づき」を与えるようにしており「待つ」時間も非常に重要だと学びました。デブリーフィングはただのフィードバックでもレクチャーでもなく学習者自信に答えを見出せるための教育手法であることを学びました。

シナリオ実践/デブリーフィング

壁一面のモニター

3日目

ハワイ大学看護学部のシミュレーションセンターへ見学に行きました。広大な敷地に様々なシミュレーターや目的に応じたシミュレーションルームが完備されており、学生教育の一部にシミュレーション教育がしっかりと根付いている事が伺えました。

【最後に】
今回ハワイ大学のBerg先生はじめSimTikiスタッフの先生方、岡山医師研修支援機構の方々、そして一緒に参加して下さった皆様には大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。

Montreal General Hospital研修(西宮祐輔薬剤師)

  • 視察目的国:カナダ(Department of anesthesia, Montreal General Hospital, Canada)
  • 渡航期間:2013年10月23日~28日、6日間

視察先のMontreal General Hospitalは6つの病院から構成されるMUHC(McGill University Health Centre)の1つであり、ERAS(Enhanced Recovery After Surgery )を先進的に取り入れチーム医療を実践している病院である。我々と同じ日程でイタリアのFerrara大学から外科医を中心としたチームが訪れており、視察を共にした。Montreal General Hospitalでは麻酔科医Carli先生が講習プログラムを準備して下さり朝から夕方まで密度の濃い講義を拝聴することができた。

2013年10月24, 25日

カナダにおけるERASも本邦と同様、多職種の連携によるチーム医療が行われていた。講習の中で最も驚いたのはlibrarian(直訳で図書館員、司書といった意味)が医療チームにいることであった。彼らは、clinical questionに対する回答を様々な文献の中からエビデンスを吟味して提供してくれる存在である。本邦では医療チームには一般的な存在では無いため、librarianは医療の質を向上させる素晴らしい存在であると感動した。また、この日は視察を共にしたFerrara大学の取り組みについての講義もあり、イタリアでのERASに関する知見も得ることができた。

より良いERASを実践するには、病気や手術についての患者教育は重要な要素である。teach back methodは患者の理解度を向上させる非常に重要な方法である。病棟には術後経過を示したポスターや日々の目標を記載するホワイトボードなどが備えてあり、患者が術後経過をイメージして治療に参加する環境作りがなされていた。周術期の栄養管理についても積極的であり、摂取量や経口摂取開始時期を比較すると、本邦での栄養管理は海外から遅れをとっている印象であった。

病院視察の後、McGill大学のシミュレーションセンターも視察することができた。シミュレーターを用いた研修や模擬患者での救急対応など、実践形式の医療教育が行われている。このような大規模な施設があり、かつ教育資源を余す所なく活用できている点が日本との大きな違いである。

2013年10月26日

McGill大学のHumanities and Social Sciences Libraryを視察に訪れた。電子化が進み蔵書を手に取ることが少なくなった現代に適応するため、本棚を撤廃しミーティングスペースとする大規模な改革をされていた。視察に訪れた時もフロアではMcGill大学の学生の活発なディスカッション風景を見ることができた。

今回の視察を終えて、海外の医療現場を見学することで今までの医療への関わり方を客観視する機会となった。この貴重な経験を活かし当院における周術期の薬剤管理やチーム連携に努めていきたい。

小林がん学術振興会 第5回がん専門薬剤師、がん薬物療法認定薬剤師海外派遣 助成採択

鍛治園 誠薬剤師が小林がん学術振興会 第5回がん専門薬剤師、がん薬物療法認定薬剤師海外派遣に採択されました。
平成25年11/4~10日(予定)で米国がん専門病院(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)等での実地研修ならびに国際シンポジウム(The Chemotherapy Foundation Symposium;New York City)へ参加しました。

  • 視察目的国:アメリカ合衆国(ニューヨーク)Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
  • 渡航期間:2013/11/4~10,7日間

アメリカ有数のがん専門病院であるMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerで,アメリカがん専門薬剤師の活動,業務内容,アメリカでの薬剤師教育,がん専門薬剤師育成プログラム等を学び,意見交換,交流を深めるとともに,国際的なシンポジウムChemotherapy Foundation Symposiumに参加し,最先端の化学療法について情報収集を行いました。

Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(MSKCC)での実地研修

MSKCCは450床のがん専門病院であるが,薬剤師はおよそ350人勤務している。アメリカの薬剤師は薬学部を卒業後に2年間のレジデントプログラムを修了したClinical Pharmacist(臨床薬剤師)と一般のPharmacistがあり,専門薬剤師になるためにはレジデントプログラムを修了した臨床薬剤師である必要がある。レジデントプログラムはASHP(アメリカ病院薬剤師会)が認めた公的なプログラムで,そのポスト数が少ないこともさることながら,プログラムの厳しさも相当なもので,臨床で働くためにはいくつものハードルをクリアしなければならない。MSKCCには約25名のがん専門薬剤師が勤務しており,研修では彼らと日米での専門薬剤師の業務の違いなどを含めディスカッションを行った。また貴重な時間を有効に使うため,昼食の時間を利用した2年目のレジデントとのランチョンミーティングも行った。また,院内の見学も行い,テクニシャンによる抗がん剤の調製や病棟のサテライト薬局での薬剤師の活動なども見学した。

Chemotherapy Foundation Symposiumへの参加

国際的シンポジウムである第31回Chemotherapy Foundation Symposiumへ参加した。本シンポジウムは今年1年のトピックをASCOやESMOに報告されている話題性の高いものを中心に各がん種(血液,消化器,婦人科,乳腺,泌尿器科,頭頸部,肺,小児科)に分けられ,1話題につき15分程度で発表された。会場の大きさも大きく,ゆったりと聴講することが可能で,日本では上市されていない薬剤の話題などの情報を得ることができた。薬物治療の中心はほぼ分子標的薬となっており,どのがん種においても,分子標的薬の臨床試験に関するものが多い中で,基礎的な話題提供もあり,このシンポジウムに参加することで,今年1年の新薬や臨床試験の結果の情報をup dateできるとても臨床的な価値もあるシンポジウムであった。

ハワイ大学シミュレーショントレーニング研修(武本あかね薬剤師)

  • 視察目的国:アメリカ合衆国(ハワイ州)ハワイ大学SimTikiセンター
  • 渡航期間:2013/01/06~11、6日間

現場で活躍できる医療スタッフを育てる『シミュレーショントレーニング』、そのインストラクターとしての基本的なツールを学ぶため、ハワイ大学SimTikiセンターにて研修を行いました。

1日目の内容

  • 高性能マネキンSimMan
    シミュレーショントレーニングでは、喋ったり、心音や呼吸音・バイタルなどを再現できる『SimMan』という高性能マネキンを使います。高性能なだけに操作も難しいので、まず使い方のレクチャーを受けました。
  • シナリオ作成
    シミュレーショントレーニングによって何を習得させたいのか、その目的に合わせたシナリオの組み方を学び、実際にシナリオを作成しました。

2日目の内容

  • シナリオ実践テスト
    作成したシナリオに沿ってきちんとトレーニングが進められるかをテストしました。実際にやってみると必ず機械のエラーや想定外の事が起きるので、その都度シナリオや設定を見直しました。
  • チームワークを鍛える
    急変時を想定したチームワークトレーニングを行いました。患者を救うという共通認識を持って、自分の役割を果たし他のスタッフと助け合う、まさにチーム医療に必要なトレーニングでした。

3日目の内容

  • フィードバックも重要
    トレーニング後の受講者へのフィードバックは習得度を大きく左右します。日本ではついつい用意した答えを教えてしまいがちですが、実は一番記憶に残りやすいのは受講者自身の『気づき・ひらめき』、そこにうまく誘導していくことが重要なのだと気づかされました。
  • 医師、研修医、看護師、歯科医師、薬剤師、事務職員と、参加者の職種は様々でしたが、職種を超えて協力し、楽しく受講することができました。今回学んだ内容はシミュレーショントレーニング以外の教育にもぜひ生かしていきたいと思っています。このような機会を与えていただいたことに本当に感謝しています。

スウェーデン、オレブロ大学病院施設交流(小沼利光薬剤師)

  • 視察目的国:スウェーデン(Department of surgery ,Orebro University Hospital, Sweden)
  • 現地渡航期間:2012/9/4~5、2日間

今回は周術期に関して、ERAS(Enhanced Recovery After Surgery )プログラムの先駆者であるLjungqvist先生の在籍するオレブロ大学を視察した。病床数約650床程度の病院で、正面入口を入るとお店が左右に並び、ショッピングモールの様な内装となっていた。教育施設などを完備し医療従事者数が3000人に近い規模であった(岡山大学病院の約2倍弱)。Ljungqvist先生は2012年ESPENでもNutritional support in the perioperative periodの題で講演されるなど、世界的に著名な先生である。他、麻酔科Gupta先生、手術部Andersson先生、看護師Linda先生、秘書HannaさんがERASチームとして同席していた。

内容として全体的なコンセプトは薬を含めて無駄なことはしないというものであり、術前の下剤処置や炭水化物負荷、麻酔薬の選択など様々なポイントについて講義があった。

  • 糖尿病患者も含め術後のインスリン抵抗性を減少させるために、術前炭水化物飲料水による負荷を行う
  • 術前処置としての下剤は脱水のリスクが高まるために使用しない
  • 麻薬より硬膜外麻酔を上手に活用する
  • 硬膜外麻酔使用時はNSAIDsの使用を避ける
  • 腸管不使用の期間を短くし、術後早期回復をはかる

上記のポイントを踏まえたERASプログラムには栄養士・看護師が積極的に関与している一方で薬剤師は関わっていない点は非常に残念であった。

今回の視察で参考になった点は多数あり、実際にリカバリー室や病棟の見学なども行い、大変有意義な時間を過ごすことが出来た。術前術後の栄養管理の重要性が示唆された視察であり、患者の栄養状態をより良い状態に保つためにも薬剤師は輸液・経腸栄養を通じて貢献していくことが課題であると感じた。

文部科学省「チーム医療推進のための大学病院職員の人材養成システムの確立」事業
サンラファエロ病院(川上英治薬剤師:周術期管理センター:PERIO)

  • 視察目的国:イタリア
  • 渡航期間:2012/03/20~25、6日間

文部科学省が進めるチーム医療推進事業において、岡山大学周術期管理センターが人材育成事業のプログラムを応募し、採択された。その際2012年度予算事業として、海外視察を事業計画し、麻酔科医師、看護師、管理栄養士、薬剤師を含め計8名が参加した。対象病院としてヨーロッパで近年推進されているERAS(注)プログラム積極的に実践しているサンラファエロ病院が選択された。サンラファエロ病院は歴史も古く、要人も診療を受け、教育機関も併設するイタリア・ミラノにおける基幹病院である。滞在期間中相互にプレゼンテーションを含めた意見交換をおこなった。また手術室の見学ツアーを企画していただき薬品の管理状況や疼痛管理状況について詳しく説明していただいた。さらにイタリアにおけるERASのネットワークについて説明を受けた。症例をデータベース化しイタリアだけでなくヨーロッパ全土でエビデンスを構築することによって、その成果を臨床の場にフィードバックしている。周術期の回復におけるコストと医療の質と両面から、このERASのシステムが貢献していることを講義していただいた。3日間という短い期間ではあったが、新しい知見を得るには十分な海外研修であり中身の濃い内容であった。

〈注〉ERAS:Enhansed Recovery After Surgery、手術後の回復力強化プログラムの意

中国四国広域がんプロ養成コンソーシアムFDワーキンググループFD事業による海外派遣研修
ジョンスホプキンスシンガポール・国際医療センター (名和秀起薬剤師)

  • 視察目的国:シンガポール
  • 渡航期間:2012/02/22~26、4日間

研修を行ったジョンスホプキンスシンガポール・国際医療センターは完全に化学療法に特化した施設であり、薬剤師は最新の治療を行うための豊富な知識を持っており、各診療科とキャンサーボードを行い治療方針を決定していた。滞在中は薬剤部において、抗がん剤調製のサポート、患者用説明資料の作成、カンファレンス・ラウンド見学、医師に対する処方提案の体験、処方鑑査等を実際に行うことができ、非常に有意義な研修を行うことができた。

2011年度 日本臨床薬理学会CRC海外研修員 (蔵田靖子薬剤師)

  • 視察目的国:オランダ
  • 渡航期間:2011/8/29~9/2

2011年8月29日~9月2日の5日間、日本臨床薬理学会CRC海外研修員として、オランダの行政機関を始め大学病院やPhase I Unit、また臨床研究をサポートしているAcademic Research Organization (ARO)など様々な機関を訪問し、オランダにおける臨床試験の実状を学びました。

オランダでは、厚生スポーツ省、日本でいう厚生労働省の中に、「ヒト被験者を伴う研究に関する中央審査(CCMO)」が設置され、オランダ国内の臨床研究の審査を管理監督しています。また、CCMOの認定を受けた各地の倫理委員会(MREC: Medical Research Ethic Committee)が、1つのプロトコール、説明文書等を審査しています。複数の施設で実施する試験に関して、1つのIRBが審査する 中央IRBのような体制になっています。MRECが設置されている施設のひとつ、Erasmus Medical Center(EMC)を訪問し、審査員に尋ねたところ、EMCでは毎週MRECが開催され、毎回5~6プロトコールが新規申請されているとのことでした。

1749年に設立された歴史ある病院、Haga Hospitalでは、病院薬剤師の臨床試験に関する役割を学び、薬局の試験室と製剤室を見学しました。試験室では、TDMや薬物代謝酵素のDNA解析などを行い、GMPに準拠した製剤室では多施設共同試験で使用される試験薬の製造、包装などを行い、原料や製剤の品質管理も行われていました。

ライデンにあるCentre for Human Drug Research(CHDR)では、早期探索的臨床試験を中心に、PK/PD試験などが実施されており、施設内には臨床試験参加中の被験者が滞在するphase I unitも備えていました。ユトレヒトにあるJulius Clinical Research(JCR)では、プロトコール作成からモニタリング、データマネジメント、生物統計に至るまでさまざまなサービスを提供しており、AROとしての役割や現状について学んで参りました。

5日間という短い期間ではありましたが、オランダ国内のさまざまな医療機関や行政機関を訪ね、日本とは異なる国民性・文化・医療制度に触れる機会をいただき、大変充実した研修を経験できました。