重合開始剤による有害事象の機序解明研究

c-04近年,注射薬の包装素材は,ガラスからプラスチックに変遷しています。我々は,以前よりアンプル開封時に混入する不溶性微粒子低減の方法を模索し研究を行ってきました。その中で,プラスチック製容器は,ガラス製容器と比較して優れている面を見出しました。

一方で,プラスチックを加工する過程では多くの化学物質が使用されます。これらの化学物質が注射薬中に混入しているのではないかという仮定の基に研究を遂行した結果,プラスチック製容器に充填された注射薬中に重合開始剤が混入していることを世界で初めて発見しました。

重合開始剤は,歯科領域において細胞毒性評価に関する研究が行われているのみです。すなわち,注射薬に混入する重合開始剤に関する研究報告は,国内外通して存在しません。注射薬中に存在する重合開始剤は,歯科材料とは異なり,持続的な注射薬使用により累積量が増加する上,直接体内に混入するため,細胞死等の有害作用を招くことが推察されます。このように重合開始剤は,細胞傷害性を有しますが,重合開始剤の研究が盛んなEUのみならず日本にも安全基準が存在しません。

本研究成果は,注射薬によって治療を受け,原因不明の有害事象に苦慮している患者さんに対して有効な予防策を見出す研究につながります。また,我々の研究成果を基に,様々な疾患の治療中に発現する原因不明の有害事象と重合開始剤の関係について,様々な分野の研究者の研究成果が蓄積されることが期待できます。さらに,重合開始剤が有害事象発現に関与していることが分かれば,プラスチック工業界と協働して,有害作用の少ないプラスチック原料の選定に寄与できます。すなわち,注射薬を充填するプラスチック原料の大幅な見直しが期待できます。

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