薬剤師レジデントの概要

岡山大学病院薬剤部では、この度、次世代を担う薬剤師の育成を目的として薬剤師レジデントコースを新設しました。大学病院として各種学会の認定研修施設に指定されている当院の強みを活かし、臨床から研究まで一貫した高度な研修環境を提供します。本コースは治験コース(2年)・病棟コース(2年)・研究コース(2年+2年)の3つのプログラムから構成され、それぞれの専門領域で特色ある研修を行います。以下に本レジデントコースの理念、目的、および各コースの概要をご紹介します。

薬剤師レジデントの理念

本レジデントコースの研修理念は、薬剤部の理念の同様に、「利他の精神」を基盤に患者中心の医療に貢献し、大学病院の使命に則って未来志向の薬剤師を育成することです。薬剤師としての使命と責任を自覚し、高い倫理観と基礎知識・技能を備え、生涯にわたり自己研鑽を続けられる人材の育成を目指します。さらに、チーム医療の一員として他職種と協働しつつ、科学的根拠に基づいた医療をリードできる次世代の薬剤師リーダーを輩出することを目標としています。また、研修を通じてPharmacist-Scientist(研究マインドを持った薬剤師)としての素養を身につけ、臨床現場の課題解決や医療の発展に主体的に寄与できる人材を育むことも重要な理念の一つです。

薬剤師レジデントコースの目的

本コースは上記の理念に基づき、以下のような具体的目的を掲げています。

  • 高度な臨床技能の修得
    急性期を含む最先端の医療現場で、患者一人ひとりに最適な薬物療法を提供できる実践的能力を養います。チーム医療の中で薬剤師として適切な薬学的管理が行えるよう研修を行います。
  • 専門性の追求
    希望する研修コースに応じて、治験・臨床研究支援や病棟業務、研究活動といった専門領域の知識と技能を徹底的に磨きます。各種専門薬剤師の資格取得や専門分野で活躍するための基盤を築きます。
  • 研究遂行能力の育成
    日常の業務から生じる疑問や課題を自ら見いだし、エビデンス創出のための研究計画を立案・実行する力を培います。データサイエンスを活用した臨床研究など最新の研究手法にも触れ、科学的思考力を養います。
  • 継続的成長とリーダーシップ
    生涯にわたり自己研鑽を続け、後進の育成や組織の発展に寄与できる人材を目指します。将来的には地域医療や専門分野でリーダーシップを発揮し、医療の質向上に貢献できる薬剤師の育成を目的としています。

当院の薬剤師レジデントコースは、研修生の志向やキャリアプランに合わせて選択可能な以下の3つのコースから成ります。それぞれのコースで共通して薬剤師としての基礎的業務研修を行いつつ、専門領域に特化した研修プログラムを提供します。

3つのレジデントコース

レジデント研修開始2年間のスケジュール概要

研究コース(2年+2年)の紹介

研究コースでは、採用と同時に大学院博士課程にも進学することで、薬剤師としての臨床業務研修と並行して本格的な研究活動に取り組む点が最大の特徴です。研修期間は4年と長期にわたり、2年目終了時に中間評価を経て後期研修へ進みます。臨床現場で日々感じる課題や疑問を自身の研究テーマとして掘り下げ、研究デザインの立案からデータ収集・解析、成果の発信まで一連のプロセスを経験します。岡山大学の関連研究室と連携し、質の高い研究を遂行できる環境が整備されています。学会発表や論文執筆にも挑戦し、研究成果を医療現場へフィードバックする力を養います。こうした研鑽を通じて、「Pharmacist-Scientist(研究マインドを持った薬剤師)」として活躍できる人材を育成することが本コースの目標です。併せて、科研費への応募も行うことで、自ら研究費を獲得することを目指します。将来的には、創薬研究や医療政策の分野でもリーダーシップを発揮しうるような、学識と実践力を兼ね備えた薬剤師を輩出することを期待しています。

治験コース(2年)の紹介

治験コースでは、当院の治験推進部と協力し、通常の薬剤業務研修に加え、治験および臨床研究の支援業務に重点を置いた研修を行います。治験薬管理や被験者対応、治験プロトコルの理解といった実務を経験し、医薬品開発の初期段階から臨床研究に至るまでの一連の流れを身につけます。また、治験や臨床試験に関する院内外の研修会・勉強会へ参加し、最新の知見や関連法規について学びます。その過程を通じ、医薬品開発から臨床研究支援まで対応できる薬剤師を目指します。治験実施機関との連携も研修し、創薬サイクルに薬剤師として貢献できる幅広い視野と実践力を養います。

臨床コース(2年)の紹介

臨床コースでは、大学病院ならではの多様な診療科・病棟での薬剤業務を集中的に経験します。一般病棟はもちろん、ICUや救急等の急性期病棟や専門診療科の病棟にもローテーション勤務し、各領域における薬物療法の専門知識と臨床技能を深めます。医師・看護師をはじめとする多職種とのカンファレンスやチーム医療に積極的に参画し、患者の薬学的ケアに関する提案や処方設計の支援を行います。また、薬剤師外来や患者指導の場にも携わり、入院から退院後まで継続した薬物療法支援の重要性を学びます。こうした研修を通じて、高度医療の現場で即戦力となりうる実践力を身につけ、高度急性期医療から地域医療まで、幅広く貢献できる薬剤師を目指します。



各コースとも、研修終了時には当院の修了証を授与するとともに、培った経験と専門性が客観的に評価される機会を設けています。岡山大学病院薬剤部のレジデントコースで研鑽を積むことで、臨床力・研究力・人間力を兼ね備えた薬剤師として、大きく成長できることでしょう。私たちは、意欲ある皆さんの挑戦をお待ちしています。今後も研修内容の充実と支援体制の強化を図り、未来の医療を担う薬剤師を共に育んでいきます。