プレスリリース:建部泰尚薬剤師「肺がん治療薬オシメルチニブによる心不全入院リスクを大規模データで検証―国内 12万人規模のデータ解析で有意なリスク上昇を確認―」
2025年10月6日
発表のポイント
- 非小細胞肺がんの治療薬であるオシメルチニブを使用した患者さんでは、心不全で入院する可能性が高まることを明らかにしました。
- 特に高齢者や治療前に高血圧、心房細動、心不全、慢性腎臓病を有する患者さんでは、より心不全入院が生じる危険性が高くなる可能性があります。
岡山大学病院薬剤部の建部泰尚薬剤師、田中雄太副薬剤部長 、岡山大学学術研究院医療開発領域薬剤部の座間味義人教授(岡山大学病院 薬剤部長)らの研究グループは、日本の大規模医療データベースに含まれる肺がん患者約12万人分のデータを解析し、EGFR変異陽性の非小細胞肺がんの治療薬である「オシメルチニブ」を使用する患者さんでは、他の治療薬を使う患者さんと比較して心不全で入院するリスクが 2倍以上高いことを明らかにしました。
加えて、特に高齢者や治療開始前に高血圧、心房細動、心不全、慢性腎臓病といった疾患がある患者さんでは、より心不全入院のリスクが高い可能性が示されました 。今回の発見は、オシメルチニブによる薬物治療を受ける患者さんの心臓の状態を、これまで以上に注意して見守る必要があることを示しています。これにより、副作用の早期発見・予防につながり、 患者さんがより安全に治療を受けられるようになることが期待されます。
この研究成果は9月12日 、米国心臓病学会機関誌「JACC: CardioOncology」(Q1、Impact Factor 12.8)に掲載されました。
研究者からひとこと
建部泰尚薬剤師
EGFR陽性の非小細胞肺がん治療薬であるオシメルチニブは、今後も多く使用されることが予想されますが、心臓の副作用に注意しながら使用していくことが大切です。今回の研究結果をきっかけに、患者さんがより安心して治療を受けられるような仕組みづくりにつながると良いと思います。
論文情報
論文名 | Risk of Heart Failure Hospitalization in Patients Treated With Osimertinib |
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掲載紙 | JACC: CardioOncology |
著者 | Yasuhisa Tatebe, Yuta Tanaka, Yohei Manabe, Shinobu Okano, Tsukasa Higashionna, Hirofumi Hamano, Kiminaka Murakawa, Yoshito Zamami |
DOI | 10.1016/j.jaccao.2025.06.011. |
URL | https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jaccao.2025.06.011 |
詳しい研究内容について
肺がん治療薬オシメルチニブによる心不全入院リスクを大規模データで検証 ― 国内12万人規模のデータ解析で有意なリスク上昇を確認 ―
お問い合わせ
岡山大学病院 薬剤部
副薬剤部長 田中 雄太
(電話番号) 086-235-6773 (FAX) 086-235-7974