4月 新人勉強会【医薬品情報】

担当:槇田崇志主任,佐田光薬剤師

4月の薬剤部新人勉強会は「医薬品情報」がテーマでした. 患者さんをはじめ,他職種のためにも問い合わせなどに適切に対応するためには,医薬品情報の収集・評価・加工・提供・管理がとても大切です.
第1回は,問い合わせ対応時の基本的な姿勢から,様々な情報源,回答方法まで,実例を交えて説明されました.
第2回では,よくある問い合わせ事例について新入職員が実際に調べて回答しました.実際にたくさんの情報がある中で,どの情報源から情報を得るか.また,得られた情報からどのように考えるかについて学ぶ機会になりました.

新人薬剤師の感想

  • 具体的な場面や質問を例に,実際に様々な媒体を使って回答を考えてみることで,どういった質問にどのような情報媒体が適しているのかを学ぶことができました.今後,当直などで薬の質問に対して自分で回答しないといけない時には,今回学んだことを活かしていきたいです.(河本紗季薬剤師)
  • 医薬品情報の勉強会を通じて,様々な情報源から医薬品情報を適切に収集する方法や,医薬品の効能や相互作用,配合変化に関する理解が深まりました.医薬品情報プラットフォームの「AI-PHARMA(アイ・ファルマ)」には過去の問い合わせ事例から新規医薬品のヒアリング時のQ&Aなど多岐にわたる情報がまとめられていること,様々な場面での活用方法について教えてもらいました.今後は患者さんに対して安全で有益な情報を提供するために,医薬品情報収集・管理ツールを積極的に活用していきたいと思いました.(橘男薬剤師)

5月 新人勉強会【電子カルテの操作】

担当:村川公央副薬剤部長

5月に行われた薬剤部新人勉強会では,「電子カルテの操作」がテーマでした. 電子カルテは,患者の医療情報をデジタル化して一元管理するシステムであり,病院薬剤師の業務において重要な役割を果たしています.正確な電子カルテの操作方法を身につけることで,迅速に患者の基本情報,薬剤情報,注意すべき検査値やアレルギー情報を取得することが可能となり,医療安全の確保と適切な薬剤管理が実現します.

以下に,新人薬剤師が学んだ内容について紹介します.

  • 患者の基本情報 (名前,年齢,入院履歴,診断情報)の確認方法
  • 薬剤情報(薬剤管理指導記録,持参薬報告,服薬履歴)の確認方法
  • 薬の効果を視覚的に把握できるグラフィックチャートの確認方法
  • 検査値(血液検査,尿検査)の確認方法
  • 処方オーダの入力方法
  • アレルギー情報の入力方法
  • 掲示板(薬剤師同士や他の医療スタッフとの情報共有に必要なツール)の活用方法
  • Medoc(薬剤管理や調剤業務の効率化を図るためのシステム)の概要と操作方法

今回の勉強会では,基本的な電子カルテの操作を学びました.カルテから患者さんの最新の健康状態を的確に把握し,適切な薬剤管理を行うためのスキルを身につけ,ここで得た知識が今後の業務に活かされることを期待します.

新人薬剤師の感想

  • 電子カルテにはたくさんの情報が載っていて使い方などよくわかっていない部分が多かったが,どこにどのような情報が載っているのかといった説明を聞き,情報収集のやり方がよくわかりました.今回教えてもらったことを実際の業務に役立てたいと思いました.(秋田歩夏薬剤師)
  • 業務を行う際に,電子カルテ上で確認や入力が必要となる部分や,注意すべき点などを知ることができました.また,テスト患者を使用して実際に作業することで,より具体的な操作方法が理解できました.(三澤可奈薬剤師)

6月 新人勉強会【バンコマイシンの薬物血中濃度モニタリングTDM】

担当:大川恭昌薬剤師,森下陽介薬剤師,真鍋洋平薬剤師,川西秀明薬剤師

6月に開催した薬剤部新入職者対象の勉強会では,「バンコマイシンのTDM」がテーマでした.バンコマイシンは,MRSAなどのグラム陽性球菌をターゲットによく使われる医薬品で,感染治療において重要です.一方で,治療域と副作用域の血中濃度が近く,急性腎障害など重篤な副作用を起こしうるため,慎重なモニタリングが必要です.そこで勉強会を通して適切なTDMの手法を身につけることは,安全で最適な薬物治療の実践につながると考えています.

今回の内容

第1回

  • TDM解析に必要な基礎知識(対象医薬品,TDMの特性,PK/PD理論)
  • バンコマイシンの特性(対象細菌,他剤との比較,副作用など)
  • 初回の投与設計をする(抗菌薬TDMガイドラインを参考に)

第2回

  • 継続の投与設計をする(TDMシミュレーションソフトを用いて)
  • 血中濃度が高かった際の対応(減量,投与スキップ,採血時の手技確認など)
  • 提案した内容を電子カルテに記録する(希釈液量,点滴時間,次回採血日時など)
  • 講師役薬剤師の感想

    • 今回の勉強会では,症例を踏まえたoff the Job trainingとして,成功例とあわせて失敗例も含めて学んでもらいました.答えが1つではない薬学的介入は難しさもありますが,皆さん楽しみながら真剣に取り組んでいました.(大川恭昌薬剤師)
    • セントラルで働く新人薬剤師にとって,薬物治療に介入できる初めての機会となるかもしれません.目標の血中濃度にハマったとき,なんとも言えない達成感を味わうことができるかも.ここで得た知識が役立つことを期待しています.(森下陽介薬剤師)
    • TDMは薬物治療において薬剤師が特にイニシアチブを発揮すべき領域と思います.なかなか数回のトレーニングだけで心配無用!…というのは難しいものですが,第一歩として参考になれば幸いです.困ったときはいつでも電話ください!(真鍋洋平薬剤師)
    • 模擬症例では,TDMシミュレーションソフトを使って投与設計を行ってもらいました.はじめて使うシミュレーションソフトに苦戦しながらも,それぞれの特徴が表れた投与設計が印象的でした!!(川西秀明薬剤師)

    新人薬剤師の感想

    • 薬物血中濃度モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring:TDM)を行う際に注目すべきポイントを学ぶことができました.また,実際にシミュレーションを行うことで,薬物血中濃度の推移を参考にして,投与量の妥当性を検討する練習にもなりました.これからも演習を重ねていき,問題なくTDMを行っていけるようにしていきたいと思います.(柿本晴香薬剤師)
    • 前回のTDM講習を踏まえて,より実践的なTDMを行う上での知識を得ることができました.自分の手を動かしながら解析ソフトを扱うことで,様々な状況を想定した模擬解析が実務に生きると感じました.(宮崎大夢薬剤師)

7月 新人勉強会【内服薬・注射薬の監査】

担当:正岡康幸主任,猪田宏美主任

7月の薬剤部新人勉強会は「内服薬・注射薬の監査」がテーマでした.普段,調剤を行っているところから一歩進んで,処方内容をしっかり吟味しました.薬剤同士の併用禁忌の情報はシステムでチェックがかかるようになっていますが,病態に対する使用薬剤の禁忌等は薬剤師による入念な確認が必要であり,今回様々な角度から議論ができたと思います.

内服薬監査では薬物相互作用による投与量調整,注射薬監査では配合変化やカリウムの濃度等について,それぞれ着目するポイントを再確認できたのではないかと思います.

新人薬剤師の感想

  • 研修では,実際の処方を見ながら監査するポイントを考えることができたので,より理解が深まりました.注射薬に関して,カリウムやインスリンは誤った量を投与すると重大なアクシデントに至る場合があり,当直帯などで急いでいてもしっかりと確認する必要があることを学びました.さらに,実際に計算することでより知識が身に付きました.(岡佑里恵薬剤師)
  • 「この処方,何だか変だな」という違和感を大切にするという言葉が印象的でした.調剤しながら処方内容をしっかりと見る余裕を持ち,多くの処方に関わって違和感を少しずつでも覚えられるように精進します.(杉野雅哉薬剤師)

9月 新人勉強会 【TDM演習 応用編(バンコマイシン)】

担当:大川恭昌薬剤師,森下陽介薬剤師,真鍋洋平薬剤師,川西秀明薬剤師

今回開催したTDM演習は,6月に開催したTDM演習入門編に続く応用編であり,「特殊な病態や小児の患者さんへのバンコマイシンの投与設計ができる」ことをテーマとして開催されました.

当院では,移植手術や敗血症による急性腎障害や小児の先天性心疾患に加えて,心臓血管外科手術の症例が多いことも特徴です.そうした患者さんに対して,バンコマイシンを用いた安全で最適な薬物治療を24時間365日提供するためには,薬剤師の継続的な学習やトレーニングが欠かせません.今回は腎機能に障害のある患者や小児に対するTDMの介入について,実際の症例を用いながら,2回に分けて勉強会を開催しました.

今回の内容

第1回

  • 腎機能が低下した患者(菌血症・敗血症性ショックに対して投与開始)
  • 末期腎不全で維持透析中の患者(透析シャント感染に対して投与開始)
  • 持続的腎機能代替療法施行中の患者(大動脈解離の手術後に投与開始)

第2回

  • 小児 TDM マニュアルの解説
  • 一般小児患者(脳腫瘍術後,化学療法を施行した後に投与開始)
  • 小児先天性心疾患患者(左心低形成症候群に対するフォンタン手術後に投与開始)
  • 講師役薬剤師の感想

    • 第1回を担当しましたが,前回の資料や抗菌薬 TDMガイドライン,シミュレーションソフトといったツールをフル活用して,みんな真剣に取り組んでいました.回答が1つではない難しい症例でしたが,自身が立案した処方設計の理由も添えて発表してくれました.(大川恭昌薬剤師)
    • 第2回を担当しました.小児は年齢(月齢)によって腎機能の正常値や推奨投与量が異なるためTDMガイドラインとシミュレーションの間に乖離がおこりやすく,成人に比べると投与設計が難しいことが多いですが,試行錯誤しながら取り組んでいました.(川西秀明薬剤師)
    • 今回も時間いっぱい頑張ってくれました.小児の抗菌薬投与設計はやや難易度が高いと思いますが,実際に迷わないためにも,あらかじめ自分なりの方針を決めておくのもいいと思います.普段の業務でTDMをしていなければ頭から抜けてしまうと思うので,定期的に過去の実症例で復習するのはオススメです.(森下陽介薬剤師)
    • 実際には,今回のような症例だけでなくいろいろな症例を目にすることと思います.大事なことは,もし困ったら一人で悩まず私たち含め先輩や誰かに相談することです.頼れる先輩もたくさんいるので,ぜひいつでも相談してください.(真鍋洋平薬剤師)

    新人薬剤師の感想

    • 医師からのTDM依頼に応える形で行われた今回の研修は,実践的で緊張感がありました.患者や看護師や他のメディカルスタッフ等に対しての説明方法などを含めて,日頃の学習で得た知識をどのように活かすか,より深く意識する良い機会となりました.(杉野雅哉薬剤師)
    • 透析患者や小児など,今回のような研修がないままTDMの投与設計に直面すると,迷うことになりそうな症例について学ぶことができました.医師からの依頼にどのように対応するかをワーク形式で学んだことで,実務に備えることができたと感じています.今後も学んだことを活かしながら,投与設計の演習を継続していきたいと思います.(丸山里咲薬剤師)
    • 新人勉強会の様子

      勉強会終了後 ほっと一息