周術期管理センター

周術期管理センターでは、専従の薬剤師が手術前の患者に関わっています。

岡山大学病院では、2008年から手術を受ける患者さんに快適で安全、安心な術前・術中・術後の環境を効率的に提供することを目的に開設されました.当院の周術期管理センターにおける最大の特徴は、外来から多職種チームで関与していることです。その中で、薬剤師は、現在使用している薬剤、健康食品・サプリメント、市販薬の服薬状況の確認、薬剤アレルギーや副作用歴の情報を収集し、術前に休薬すべき薬剤を確認するという役割があります。

開設当初より部分的に介入していましたが、2014年からは使用中の薬剤がある全ての患者を対象に薬剤師が面談するようになりました。

麻酔科医師や看護師など他職種への薬剤情報提供に加えて、手術前に中止すべき薬剤を見逃さず、休薬の確認をすることによる手術延期を防ぐことに貢献しています。

入院支援室

入院支援室は、入院前からの情報収集と情報提供・交換により、入院・退院支援の質の向上をはかることを目的に、2015年に開設されました。看護師と共に患者対応し、必要に応じて、医療ソーシャルワーカーや管理栄養士と連携しています。

薬剤師は、内科の場合は、外来での処方漏れや休薬指示漏れを確認しています。外科の場合は、周術期管理センターでの介入よりも早い段階で患者面談できることで休薬指示の確認がより確実になっています。

このように、入院前に薬物治療全体像を把握しておくことで、病棟薬剤師の負担が軽減され、入院後に病棟薬剤師の薬物治療への介入がスムーズに実施できることにつながっています。

今後、高齢で独居の方がますます増加することが予想されます。保険薬局薬剤師や地域の他職種との連携も必要になることが予想されます。

薬剤師外来(化学療法)

がん治療は手術療法、放射線療法、化学療法が中心となります。その中で化学療法は抗がん薬、分子標的治療薬、内分泌療法薬による治療のことを指し、当院ではその多くが外来で行われています。薬剤師は、外来での化学療法をより安全に実施するために、がん治療を主に行っている医師、外来腫瘍センターの看護師、各診療科の看護師、歯科衛生士、管理栄養士と連携しながら、患者さんへの薬剤管理指導や抗がん薬の調製を行っております。

また、当院では医師の指示のもと薬剤師が診察前に患者さんと面談を行っています。事前に副作用の評価、服薬状況、相談したい事柄等を把握し主治医へ伝えることで、患者さんの治療継続や医師の診察時の負担軽減にも貢献しています。必要時には支持療法薬の提案も行っています。

他にも、がん患者さん毎にレジメン内容や点滴抗がん薬の投与量、副作用状況等を記載したがん化学療法情報提供書をかかりつけ薬局に提供したり、かかりつけ薬局からいただいた服薬情報提供書(トレーシングレポート)を主治医へ報告したりするなど、地域の薬局との連携を図っています。

これらの活動により、薬剤師も患者さんのがん治療のサポートを通してチーム医療に貢献しています。

痛みリエゾン外来

痛みリエゾン外来ではその名前の通り、外来の診察室にて、医師、看護師、理学療法士、栄養士、MSWと共同して、患者さんの「慢性疼痛」の診療にあたっています。当院の痛みリエゾン外来では、多職種が患者さんの状態をそれぞれの分野から評価し、多角的に把握することで治療につなげています。

慢性疼痛は必ずしも怪我の後遺症のような器質的原因があるわけではない、治療が難しい疾患です。診療には一般的な鎮痛薬だけでなく、鎮痛補助剤や漢方薬など多岐にわたる薬が使われます。その中で薬剤師は多剤併用中の患者さんの現在の処方の評価やこれまでの薬物治療歴の整理、新たな薬物療法の提案や処方の適正化に貢献しています。

また患者さんとの面談の中で薬剤師が服薬への不安や疑問を解消してあげることで、医師の処方意図通りに服薬してもらえるようにしています。様々な薬剤を飲んでいる患者さんがいるため、幅広い薬の知識を持った薬剤師の職能を活かされる場となっています。

精神科リエゾンチーム・せん妄対策チーム

岡山大学病院のような総合病院では、うつ病や統合失調症のような精神疾患をもつ方が手術などを目的に入院する場合があります。また、手術、薬剤や長期間の入院によるストレスなどの影響で入院中に精神的な不調を訴える患者も少なくありません。これらの患者の多くは精神科病棟でなく身体の治療を行う病棟に入院しますが、入院中の精神的サポートを行うために「精神科リエゾンチーム」が関わります。精神科リエゾンチームは、精神科医、看護師、臨床心理士、薬剤師、理学療法士で構成され、各職種の専門性を活かして入院中の精神的不調に対応し、身体の治療が完遂できるようにサポートします。

入院中に生じる精神症状のうち、せん妄は高侵襲性の手術を受ける患者や高齢者に発現しやすい疾患です。岡山大学病院では、原則として全ての患者に対し入院時にせん妄のリスク評価を行い、ハイリスクと評価された患者に重点的なせん妄対策を行う仕組みを取っています。精神科リエゾンチームと周術期管理センターが中心となり「せん妄対策チーム(Team-D:Transmission Education Aid Management of Derilium)」を立ち上げ、病棟スタッフによるせん妄評価の支援を行っています。

妊娠と薬外来

「持病でお薬を飲んでいるけど、赤ちゃんに影響はあるの?」
「妊娠に気づかずお薬を飲んでしまったけど大丈夫?」などの不安を抱かれる方は多いと思います。

これらの妊婦・胎児に対する薬剤の影響について、国内外のデータや資料を調査し最新の情報を提供しているのが国立成育医療研究センターに設置されている「妊娠と薬情報センター」です。当院は2019年度より「妊娠と薬情報センター拠点病院」に認定され、センターによりまとめられた情報を提供する「妊娠と薬外来」を開設しました。

妊娠を希望されている方や妊娠中の方を対象に、薬剤の妊娠への影響についてご相談を受け付け、医師とともに最新の情報を提供しています。不安の解消に少しでもつながるように、ゆっくりと時間をかけて説明を行っています。

緩和ケアチーム

緩和ケアとは、がんと診断された時から認められる身体や心の様々な苦痛を和らげ、患者さんやご家族にとって可能な限り良好な、元気だった頃と変わらない生活を実現させるための医療です。かつて緩和ケアは、終末期に提供されるケアと捉えられた時期がありました。そのため、積極的な治療ができなくなった人の最後のケアと誤解されがちですが、実際は病状のどの時期においても行われる医療です。緩和ケアチームは患者さんそれぞれが症状をコントロールしながら、ご自分の生活にあわせた治療の選択や、ご自分らしく生きるためのお手伝いをしています。緩和ケアチームは、緩和支持医療科の医師、精神科医の医師、薬剤師、看護師のコアメンバーの他、麻酔科の医師、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、臨床心理士、メディカルソーシャルワーカなどから構成されています。毎週カンファレンスを開催し、チームに紹介された患者の情報を共有して週に 1 回以上チームラウンドを行っています。また、緩和ケアチームが未介入のオピオイド使用患者に対しても緩和支持医療科の医師と薬剤師によるカルテ回診を週に1回行っています。

院内外問わず定期的な勉強会などを開催し、薬剤師も安全な薬物治療のため、教育・啓発活動にも積極的に関わっています。

感染制御部

感染制御部は、感染管理を担当する医師、歯科医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師、歯科衛生士などで構成される専門チームです。感染制御チーム(Infection Control Team; ICT)と、抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team; AST)の2部門で構成されます。

1.感染制御チーム(Infection Control Team; ICT)

ICTは病院内の感染対策を担うチームです。主な目的は、医療関連感染の発生を予防し、患者に安心・安全な医療を提供することです。また、職員の安全と健康を守ることも重要な役割です。ICTの主な活動内容は以下の通りです。

  • 感染症サーベイランス(院内感染症発生状況の監視)
  • 手指衛生実施状況サーベイランス
  • 感染対策実施状況ラウンド(感染対策の確認)
  • 職員の抗体検査とワクチン接種の実施・管理
  • 職員の教育・啓発活動
  • 院内感染対策マニュアルの作成
  • 感染対策地域連携(地域の他施設との情報共有、感染対策指導・相互チェック)

2.抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team; AST)

ASTは、抗菌薬・抗真菌薬の適正使用を促進する専門チームです。目的は大きく分けて2つあります。1つ目は、適切な抗菌薬の選択や治療期間の提案によって治療効果を最大化し、医療の質を向上させることです。2つ目は、抗菌薬の不適切な使用を減らし、将来の新たな耐性菌の発生を防ぐことです。ASTの主な活動内容は以下の通りです。

  • 院内における抗菌薬の適正使用マニュアルの作成
  • 抗菌薬適正使用支援カンファレンスの実施(定期的に患者の抗菌薬治療をモニタリングし、必要に応じて治療計画の修正を提案)
  • 抗菌薬の使用状況モニタリング
  • 職員の教育・啓発活動

薬剤師は抗菌薬を含む薬剤の専門家として、感染制御部においては主にASTで中心的役割を果たしています。

生物学的製剤自己注射外来指導

リウマチ・膠原病内科、整形外科、消化器内科の外来で生物学的製剤を導入する患者さんやそのご家族に対し、薬剤師が診察室で薬剤指導を行っています。現在、関節リウマチや強直性脊椎炎、乾癬、クローン病など、多くの自己免疫疾患に対する治療薬の一つとして生物学的製剤が使用できるようになっていますが、自己注射製剤のため、初めて使用する患者さんにとってはハードルが高い治療となっています。主治医の診察時間では十分な説明時間がとれず、また、看護師の負担軽減も考慮し薬剤師も関わっています。薬効や副作用、薬価だけでなく、各薬剤のデバイスの特徴(オートインジェクターの使い方等)も実際に注射器に触って頂きながら説明しています。注射と聞いて最初は怖いイメージを持たれている患者さんでも、使用方法のコツをつかめば、これならできそうと前向きな感想を持たれる方もおられます。安全・安心に生物学的製剤が導入できるように、薬剤師もチームの一員として外来でも活躍しています。

栄養サポートチーム(Nutrition Support Team; NST)

NSTとはNutrition Support Teamの略で、栄養管理を必要とする患者さんに対して栄養療法を行うチーム医療の一つです。医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、歯科衛生士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士ら多職種で構成されています。当院のNSTは2002年4月に発足し、2012年11月から栄養サポートチーム加算を算定しています。主な活動としてはNSTラウンドと多職種カンファレンスを行い、重症系病棟を含む入院患者さんの栄養療法について検討しています。NST専任薬剤師は主に患者さんの状態や食事摂取量などを確認しながら、栄養輸液の処方提案、医薬品経腸栄養剤の提案、食事に影響を与える薬剤の探索等を行っています。当院はNST認定教育施設であり、NST専門療法士の取得を目指している管理栄養士や薬剤師などのNST研修生を毎年受け入れています。また、院内勉強会も開催しており、職員への教育にも力を入れています。